「生食用牡蠣」と「加熱用牡蠣」の違いについてはこれまでも折にふれて書いてきたつもりですが、またもや誤解を招くような表現のニュースを発見した。
メディアの影響力をもう少し意識してほしいものだ。
鮮度の違いによって「生食用牡蠣」と「加熱用牡蠣」に分けられているわけではない。
生育している海域の違いで「生食用牡蠣」と「加熱用牡蠣」に分けられている。
上記に記事を読むと「加熱用牡蠣」には何らいいところはなく、「生食用牡蠣」の方がキレイな環境で育ち、安全性も高いという印象だけを読者に与える。
僕は基本的に牡蠣の生食はしないので、「加熱用」を買う。
「加熱用」がない場合であっても「生食用」は買わない。
理由は簡単。加熱調理をする場合、「加熱用牡蠣」の方が旨いからだ。
「加熱用牡蠣」はプランクトンなどの栄養分が豊富な海域で育てられる。それゆえ総じてよく太り、旨味も強い。「生食用牡蠣」は比較的キレイな海域(言い換えれば栄養分が少ない海域)で育てられ、出荷前にさらに浄化するので加熱用牡蠣に比べると旨味が弱く、痩せ気味である。
瀬戸内海がキレイになり過ぎて海水の栄養分が減り、魚が大きくなりにくかったり、魚そのものの数が減ったりしている現実を考えれば、栄養分の重要性がわかると思う。
もちろん産地によってい環境がろいろと違うし、牡蠣そのものの価格にもよるので、一概に「加熱用牡蠣」が「生食用牡蠣」より旨いとは言い切れないが、
同じ価格帯のもので比較すれば、加熱調理には「加熱用牡蠣」の方が旨い。
鮮魚店もそのあたりのことを説明するのが面倒なのか、店によっては最初から「生食用牡蠣」しか販売しないところすらある。
それから、上のニュースを読んで思ったのだが、もっと「食」に関する自己責任の考え方を徹底しないと、生産者、漁業者はとてもやっていけないし、行政も責任追及から逃れるため、いろんな食材の「生食」を禁じるだけだ。それは日本の食文化の破壊につながる。
「食」の問題だけではない。何か不都合があれば他者の責任にしようとする傾向がこの国をダメにしていく気がする。